大学院をお考えの方
当科では様々な臨床研究を行っています。
SGLT2阻害薬による心保護、腎保護作用が注目されています。これらの予後改善効果は貧血の改善によるものではないかということも明らかになりつつあります。ただこれらの知見は腎機能が比較的保たれている患者での臨床研究に基づくものです。我々の教室では、後ろ向きコホートで、進行期CKDにおいてもSGLT2阻害薬が貧血を改善することを示唆するデータを得ました。
この結果をもとに、SGLT2阻害薬の一つであるダパグリフロジンでCKDステージ3,4の患者さんでも貧血が改善されるかを検討するランダム化比較試験を行っています。
急性腎障害を起こした患者は起こさなかった患者と比べて背景因子で調整しても予後が悪いことは広く知られています。しかし、その理由は解明されていません。後ろ向きコホートで急性腎障害を起こした患者では、慢性炎症、低栄養、貧血状態が遷延していることを示してきました。
急性腎障害が予後不良につながるメカニズムと介入研究への糸口をみつけるため、前向きコホートで詳細な検討を進めようとしています。
当院はがん拠点病院であり、多くの悪性腫瘍患者を治療しています。電解質バスターズとタイアップして、悪性腫瘍治療中の患者さんの電解異常のリスク因子を検討しており、これまで電解質異常を起こすと認識されていなかった抗悪性腫瘍薬が電解質異常のリスク因子であることがわかってきました。
悪性腫瘍治療中の患者の約30%が経過中に低ナトリウム血症を起こします。最近のコホートにおける疫学や臨床的特徴についての研究はなく、QOLとの関連も含めて検討しています。
腎性貧血治療薬であるロキサデュスタットは、腎臓からのエリスロポエチン産生を亢進させることで貧血を改善すると言われています。しかし、長期透析をしていて、腎機能が廃絶していると考えられている患者でも、ロキサデュスタットで貧血が改善します。この効果は肝臓からのエリスロポエチン産生を亢進させるためではないかと考え、透析施設と共同研究を行っています。
同じ腎機能でも腎萎縮の進んでいる症例と、腎サイズが保たれている症例があるのは皆さん、臨床でなんとなく感じられていることではないでしょうか?その「なんとなく」を、SYPAPSE VINCENTというCT画像から腎容積を自動測定するソフトを用いて客観的に判断することができます。腎容積が血清クレアチニンで評価される腎機能とは独立した心血管系イベント、急性腎障害、腎世貧血などの予測因子ではないかを検討しています。また、腎うっ血の評価などにも応用できないか検討中です。
腎臓の縦軸を
指定するだけで
自動で腎臓全体を抽出して
腎容積を測定する
薬学部との共同研究で、大規模な電子カルテデータで、Artificial Intelligenceの手法を取り入れ、薬剤性腎障害の予測モデルの開発を試みています。
京都大学医学部付属病院リウマチセンターとの共同研究で、リウマチ性疾患の患者さんに協力をいただき、臨床データを登録させていただいたKURAMAというデータベースを用いて、関節リウマチの薬剤のうち、腎保護作用をもつ薬剤や腎障害を与える薬剤の同定を試みています。