教室について

教授挨拶

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Greeting
新しいことに常に挑み続け、
臨床も教育も研究も世界を
意識して
名古屋市立大学大学院医学研究科腎臓内科は令和元年8月に誕生した新しい講座です。
その源流は第三内科から改称された心臓腎高血圧内科学にあり、腎臓内科教室が独立しました。よって産声をあげたばかりの講座ということになります。私はその意味で初代教授に相当しますが、まだまだ小さい講座であっても常に世界を意識した講座にしたいと考えています。
一方で、我々の規模は今後確実に拡大します。実際、令和3年4月に名古屋市立東部医療センターおよび西部医療センターが名古屋市立大学の附属病院となりました。この3つの施設に加え、令和5年に緑市民病院さらには名古屋市厚生院も名古屋市立大学の附属病院になる予定です。また令和7年には救急災害棟が建設され、人工透析部は現在の規模を大幅に拡大しそこに移転予定です。
臓内科医は何ができるのか?
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残念ながら腎臓は経年劣化が激しい臓器であり、未曾有の高齢化社会に入り慢性腎臓病をお持ちの方はますます増えていくでしょう。よって、悪い腎臓を持ちながらも健全にQOLを維持しながら良い人生を送ってもらうために、腎臓内科医は何ができるのか?ということを常に考えながら臨床に邁進したいと考えております。
具体的には、我々の教室は腎臓さえ診ればよいというスタンスではなく、慢性腎臓病に伴う全身の変化(骨粗鬆症や貧血など)や合併症(睡眠時無呼吸症候群、心筋虚血、心不全、脳梗塞など)を鋭敏に察知し、全身を診るというスタンスで臨みたいと考えています。
腎臓の分野は新薬の開発も急加速し治療が様変わりしている領域でもあります。大学病院ならではの、世界から見ても全く遜色のない最新の医療を提供していきます。そのためには、常に変わることを恐れず、新しいことに挑むチャレンジングな姿勢が必要であり、多くの治験や既存薬剤のドラッグリポジショニングを促す臨床研究をやっていく所存です。透析領域においても腹膜透析と血液透析のハイブリッド透析だけでなく、Incremental HDを推進しようと考えております。これは週3回の血液透析からいきなり導入するのではなく、様々な新規薬剤を駆使することで残腎機能を保持し週2回透析で導入し、腎機能が完全に落ちてしまった段階で週3回に徐々に移行するという考えに基づいた血液透析です。今までの「透析量を多くするほど予後が良くなる」というマインドセットとは対極をなす、残腎機能を最後まで保持させようとする概念です。
このIncremental HDは医療費を下げるだけではなく、患者様のQOLにとっても非常に好ましく、米国でも注目を集めつつあります。おそらく全国の大学病院の中でも、このスタンスを実践している病院はないでしょう。

来に生かせる教育・研究
そして世界への発信
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我々がもう一つ力を入れている点は教育です。腎臓内科は「内科の中の内科」とも言われ、学生や研修医が腎臓内科を廻ることで、その面白さに気づき将来どの科でも使える必須の知識を与えたいと考えています。また、専攻医には、どこに出しても恥ずかしくない臨床能力を身につけさせます。これには内科医としての素養だけでなく、内シャント作成やPTA、さらには腹膜透析カテーテル挿入など腎臓外科的な素養も含めて広く教育します。また、大学院生には最新の統計解析を駆使した臨床研究をゼロから学んでもらいます。

研究は、さらに良い医療を未来に提供するために不可欠なものです。当研究室は実践医学に資する研究を求め、「研究のための研究」を排除しています。いったい誰に、研究の種につながるセレンディピティが降ってくるのでしょうか?それは、日常臨床で、現実の患者の治療に悩み、現在できうる治療を精一杯しても状況が改善せず、適応外使用をああでもない、こうでもないと悩んでいる臨床家にこそ降ってくるものなのです。あるいは、自分の患者を予兆なく亡くしてしまい、どうすればもっと早い段階で、隠れていた病気を見いだせていたのか、と後悔している医師にしか降ってこないでしょう。
今の医学に不足しているunmet medical needsや、自分の欠失している能力に真剣に悩んでいないと、物事を突き詰めて考えられないからです。この臨床に根ざしたセレンディピティを種にして生まれた研究成果は世界に発信しないと意味がありません。世界への発信によって世界の臨床ガイドラインや診療を変えたいというのがまさしく我々の最終的な研究のゴールだからです。

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腎臓内科/人工透析部部長・
腎臓内科学教授
濱野 高行

Always
challenging